中古品や新古品といった「古物」でビジネスをするなら、古物商許可証が必要です。
許可証が届く前に開業してしまうと、罰則の対象になってしまいます。「知らなかった」では済みません。
難しいテストがあるわけでもないので、サクッと済ませてしまいましょう!
今回は、古物商許可証の申請に必要な準備や流れを解説します。
古物商許可証を申請する前に確認すること
古物商許可証の申請をする前に、いくつか確認することがあります。
申請そのものに影響するポイントもあるので、忘れずにチェックしてくださいね!
また、「時間がないので、やることだけ理解できればいい」という人向けに、ざっくりとした解説記事も掲載しています。
欠格事由に当てはまっているか
古物商には、許可を与えられない条件があります。
「欠格事由(欠格要件)」と呼ばれるものです。
申請の準備を始める前に、自分が欠格事由に当てはまっていないか確認しましょう。
どれかひとつでも当てはまっていると、古物商の許可は下りません。
これは古物営業法によって定められています。盗品の流通防止や被害の迅速な回復を目的とした法律です。
罪を犯す可能性が高い人や警察に協力しない人に、許可は与えられないシステムになっています。
そのために審査があるんですね。
一般的な社会人として生活を送っていれば、該当する確率は低いものばかりです。
ですが許可の取り消しになる条件でもあるので、目を通した方が無難です。
個人と法人、どっちで申請する?
古物商許可証には、個人事業主用と法人用の2種類があります。
申請の流れに違いはなく、効力も同じです。
審査の通りやすさについても、申請者(役員など)のかかえている事情によって変わるので、どちらの方が有利とは言えません。
申請のしやすさについては、個人の方が有利です。
必要な書類の数や欠格事由の対象者が少ないので、負担は軽いんですね。
「なら個人事業主で申請して、法人として開業しよう」
と、思った人もいるかもしれません。
残念ながら、個人の許可証で法人の古物商を始めることはできません。逆も同じです。
もしやってしまうと、無許可営業になってしまうかもしれません。そうなると、3年以下の懲役か100万円以下の罰金、最悪の場合はその両方が考えられます。
切り替え手続きもありませんので、新たに申請する必要があります。
ビジネスプランに合った用途で申請しましょう。
営業所はどこか
営業所とは、営業活動の拠点となる場所のことです。
店舗そのもの…といえばイメージしやすいかもしれません。ネットショップだけを考えている人は、事務作業をする場所が営業所になりますよ。
これはどんな営業方法でも、必ず決めるポイントです。
古物商の許可申請を行うのは、営業所の住所を管轄する警察署。営業所が決まらないと、申請をする警察署も決まりません。
また「住所さえあればOK」というものではなくて、申請者ごとにきちんと審査されています。
実態のないバーチャルオフィスや、居住専用の物件などは審査に落ちる可能性が高いです。
取り扱う品目
本、衣類、美術品などなど…
自分がどんな商品を取り扱うのか、あらかじめ決めておきましょう。
申請書には「主として取り扱おうとする古物の区分」という項目があって、そこで該当する品目を選びます。
盗難があったとき、警察はその品目を扱う古物商と連携を取り、素早い事件解決を目指します。
申請書には「いずれか1つに○を付けること」とありますが、複数選ぶことも可能です。でも1つに絞った方が、審査に通りやすくなります。
いくつも丸を付けていると、その分警察からの質問も多くなります。「本当にそれだけ扱えるのか」と、厳しく見られてしまうからです。
取り扱う品目は後から無料で追加できます。
申請するときは最低限にとどめ、追加したくなったら手続きをするのがおすすめですよ。
仕入れルートや営業方法など
申請書を提出する際、担当者から仕入れ方法や営業所などについて、聞かれる場合があります。
ここで「何も決めてない」と答えてしまうと、「資格だけ欲しい人」と受け取られてしまうかもしれません。
そうなると、審査を通過するのが難しくなります。
古物商が許可制なのは防犯のためなので、むやみに許可を出すわけにはいかないんですね。
「副業として、インターネット販売をする」
「仕入れ先は都内中心だけど、地方への出張も考えている」
といった、ざっくりとしたもので問題ありません。答えられるように、心の中でも準備をしておきましょう。
古物商許可証を取得するためのスケジュール
申請の手続きは、専門家でなくてもできます。
専門家に依頼すればスムーズにできますが、高額な依頼費用がかかります。
費用を抑えたいなら、自力での申請がおすすめです。
古物商の許可は、申請してすぐもらえるものではありません。
審査には大体40~60日かかります。でも、一度取得すれば期限はありません。
早めに申請しておいて、損はありませんよ!
開業予定日の3か月前から動き出している人が多いみたいです。
また、法人と個人で必要な書類が違います。
今回は個人で申請する場合を解説します。
法人として申請する場合は、こちらの記事を参考にしてくださいね。
その1:営業所を決める
申請書を作る前に、営業所の物件を取得しておきましょう。
営業所はどこでもいい…というものではなくて、求められる条件があります。
無計画に契約してしまうと、申請を受理してもらえない可能性もあります。
営業所に求められる条件は主に2つです。
独立性があるか
部外者が簡単に入れる構造だったり、顧客が来た時にすぐ判断できない物件は不適切と見なされます。
古物商は高額な商品を扱いますし、盗難に遭いやすい場所での営業を許可できないんですね。
低いパーティションで区切ったレンタルオフィスや、実態のないバーチャルオフィスなどは審査に通りません。
不安な人は、事前に警察署の担当者に問い合わせてみることをおすすめします。
その物件を使用する権限はあるか
自宅で開業を考えている人は、ここで営業活動をしても良いのか、確認してください。
特に賃貸住宅では、営業活動を禁止しているところも多いです。賃貸契約書を読んで、「居住専用」や「営業活動を禁ずる」といった文言がないか確かめてください。
別の場所を借りる場合は、不動産会社に「古物商として開業したい」と伝えておくとスムーズですよ。
条件を満たす物件が押さえられたら、「管理者」を一人決めましょう。
営業所の取引を管理・指導する人のことで、営業所に常駐させる義務があります。
欠格事由に該当していなければ、誰でもなれます。申請者が兼任しても問題ありません。
ただ、古物商としての知識が乏しい人や、通勤距離が遠すぎる人を選んでしまうと、審査に落ちてしまうかもしれません。
その2:申請書類をもらう
営業所が決まったら、そこを管轄する警察署から申請書をもらいます。
警察署のホームページからダウンロードもできます。
個人的には、担当者から直接もらうことをおすすめします。
事前に相談をしておくことで、お互いに顔を合わせることができます。
いきなり申請する場合に比べ、落ち着いて手続きができるメリットがあります。
さらにもう一つメリットがあります。
申請するときには、申請書類だけでなく添付書類も用意します。
実はこの添付書類、警察署によって微妙に違うんです。
ホームページで確認できますが、担当者に確認しておけば、より確実に失敗を防げます。
その3:書類をそろえる
申請に必要な書類は、申請書類と添付書類の2種類に分けられます。
申請書類
個人なら、必要な申請書類は最大で3枚あります。
- 古物商許可証の申請書
- 営業所の届け出
- (インターネットでの取引があれば)URLの届け出
申請書には、住民票の通りに書き写してください。
「違っててもバレないのでは?」と思うかもしれませんが、添付書類として住民票を提出するので、ごまかせません。
営業所の情報を書き込む際も、契約書などに書かれている住所を書き写します。
日付欄は空白にしておいて、警察署に提出するタイミングで書き込むと、ミスが減りますよ。
添付書類
申請書類と一緒に提出する書類です。
警察署ごとに必要な書類が違ったり、複写を求められたりします。事前に確認しておくと安心です。
確実に要求される書類は以下の通り。
- 住民票
- 身分証明書
- 略歴書
- 誓約書
管理者を他の人にお願いする場合は、その人の分も必要です。
いずれも、作成日から3か月以内のものを提出してください。
住民票と身分証明書は、役所から取り寄せます。
必ず本籍地が記載されたものを請求してくださいね。一方でマイナンバーは不要です。記載されていると不受理の原因になる場合もあります。
略歴書は、過去5年間の経歴をまとめたものです。欠格事由に該当しないことを証明するために必要です。
テンプレートが決まっているので、警察署やホームページから入手してください。
個人で開業するなら、基本的に管理者用と個人事業主用の2枚が必要です。
こちらも欠格事由に該当しないことを誓約するための書類です。内容に目を通して、サインします。
サインをする際は、住民票の通りに記入してくださいね。
その4:申請手続き
申請に必要な書類がそろったら、手続きに入ります。
まずは警察署の生活安全課(防犯係)に連絡を取り、予約を入れましょう。
予約を入れずいきなり向かうと、担当者の心証が悪くなる可能性があります。さらには担当者が不在で、対応できない場合もあるんです。
無駄な労力をかけないためにも、予約は必ず入れておくことをおすすめします。
警察署に行く際には、以下の持ち物を忘れずに用意してください。
- 申請に必要な書類
- 申請手数料(19,000円)
金額分の印紙で支払うところもあります。 - 訂正印
- 身分証
免許証など、本人が確認できるものです。
申請の手続きの最中、担当者から営業についての質問がくる場合もあります。
緊張して答えられない…なんてことにならないよう、準備をしておきましょう。
その5:審査に通ったら
申請が受理されたら、審査に入ります。
期間は40営業日が目安です。大体2か月くらい、長いと80日近くかかるようです。
書類に不備があるとさらに延びるので、ミスの無いように作成してくださいね。
また、営業所の現地確認が行われる場合もあります。
事前に警察署から連絡があるので、対応できるように準備をしておきましょう。
審査の結果が出ると警察署から連絡がくるので、古物商許可証を受け取ります。
認印と身分証(免許証など)が必要です。またこの時に古物営業について説明があるので、筆記用具があると便利です。
古物商許可証が手に入ったら、古物商プレートを作成しましょう。
ネットの製作業者に注文すれば、1000円台で作ってもらえますよ。
これを店舗の入り口など、目立つ場所に掲げます。もし目立たない場所に置いていると、「ココは無許可営業してるのかな?」といらぬ疑いをかけられてしまう可能性があります。
古物商プレートと一緒に、古物台帳も用意します。
こちらもネットで購入できますが、様式さえ守っていれば、ノートに手書きで作成しても構いません。
古物台帳は営業所に常備して、取引の記録を付けます。これをおこたると罰則があるので、忘れずにつけましょう。
これで、古物商になるための手続きは完了です!
開業準備に集中して取り組めます。
まとめ
古物商は自分で申請できます。
開業の費用を抑えたい人は、自力での申請がおすすめです。
専門家にお願いするよりも手間がかかるのも事実。
審査期間も考えると、余裕をもってスケジュールを組んだ方が、失敗は少ないです。
この記事を参考に準備を進めて、スムーズに取得してくださいね!