脱サラを考えている人にとって、最大の壁ともいえる「開業資金」。
開業資金を抑えられたらいいのに…
開業資金なんて、ナシでも開業できないの?
そう思う人も多いのではないでしょうか。
開業資金を甘く見ていると、せっかく開業しても立ちいかなくなる可能性もあるんです。
今回は開業資金が必要な理由や内訳、おすすめの調達先などをご紹介します。
開業資金はなぜ必要?何が含まれるの?
開業資金とは、ビジネスを始めるために必要なお金です。
お店を開く場合は1000万円ほどかかるといわれています。結構高額ですよね。
工夫をこらすことで500万以下で開業できたケースもありますが、個人的には開業資金は多めに用意することをおすすめします。
基本的に開業直後は収入が不安定で、少しずつ売り上げが伸びていきます。その前に資金が底を尽きたら、最悪の場合お店を畳む結果になりかねません。
それを避けるためにも、開業資金は多めに用意しておきましょう。
開業資金には主に4つの資金が含まれます。
- 物件取得費
- 設備投資
- 運転資金
- 生活費
「あれ?」と感じる項目がありますよね。
それぞれ詳しく解説しますので、ぜひ最後まで読んでみてください。
必要な資金1:物件取得費
お店を開くためには、まず店舗そのものが必要です。
それを入手するための資金が、物件取得費です。礼金、仲介手数料、保証金(敷金)、前払いの家賃などが含まれます。
特に好立地の物件だと、保証金として10か月分の家賃を要求されるケースも多いです。そうなると保証金だけで数百万円になってしまいます。
どうせ融資を受けるなら、融資してもらった借入金で物件を契約すればいいや…と考えている皆さん。
残念ながら、原則的に物件を借りるために融資金を使うことはできません。
融資を申し込む段階で、店舗用の物件を用意していないと、本当にオープンする保証がないため、金融機関から信用を得ることができません。結果的に、融資を受ける前に物件を取得する必要があるんです。
融資の審査が厳しいところだと、審査を受けることすら断られる可能性があるそうです。
金融機関によっては融資を受けてから物件を取得することもできますが、リスクがあります。
条件の良い物件は競争率が高く、空いているときに契約しないとチャンスを逃してしまいます。融資の審査は通過までに1、2か月かかってしまうため、その間に狙っている物件が満室になってしまうかもしれません。
物件取得費だけは自己資金で用意して、他の費用はすべて融資でまかなう方がリスクは低いです。
必要な資金2:設備投資
お店を開くために必要な設備を購入するための資金です。
例えば外装・内装の工事や、レジ、事務用品などがあります。他にもホームページの作成や電話回線の設置にかかる費用も、設備資金に入ります。
種類が多いので、見落とさないようにリストアップしておきましょう。
設備資金は1坪当たり50万~100万円くらいかかるといわれています。実際は自分の状況や業者などで変わるので、相場を調べたり見積もりをとっておくことをおすすめします。
見積もりは、一社だけでなく複数社お願いしましょう。
設備資金をおさえたい人は「居抜き物件」がおすすめです。
前のオーナーが使っていた設備がそのまま残っている物件のことで、最近人気を集めている物件です。必要なものがある程度そろっているので、準備の手間がかなり楽になりますよ。
居抜き物件を取得する際には、別途「造作譲渡費」が必要です。
必要な資金3:運転資金
お店を開くなら、お客様に提供する料理や商品が不可欠です。
材料や商品を仕入れるためのお金が、運転資金に含まれます。他にも、家賃や水道光熱費も含まれます。
設備資金と混同されがちですが、継続的に発生する費用が運転資金にカウントされます。
運転資金は最初の仕入れ分だけ…といわず、運営コスト6か月分は用意しておきましょう。
オープン直後から黒字になることはまずありません。ほとんどのお店は、開業してから少しずつ売り上げを伸ばしていきます。
日本政策公庫の調べによると、軌道に乗るまで半年以上かかったお店が過半数を占めています。つまりほとんどのお店は、開業してから6か月間は経営が苦しい状態です。もしその間にお店を運営するための資金がなくなったら…。
せっかく良い条件でオープンしても、成功するのが難しくなってしまいます。
いざという時のためにも、余裕をもって用意しておきましょう!
必要な資金4:生活費
意外と忘れがちなのが、経営者自身の生活費です。
「生活費って、プライベートなものなのに開業資金に入れていいの?」
そう思う人も多いのではないでしょうか。
問題ありません。むしろ、絶対用意しておくべきです!
経営者にはサラリーマンのような「給料」がありません。ビジネスで得た利益から経費を引いた差額分が、自分の収入です。
つまり赤字になれば、収入はマイナスになってしまうんです。
ほとんどの場合、オープンしてすぐには利益を期待できません。
でも、生活費は必ず発生しますよね。タイミングによっては、税金や保険料も支払わないといけません。
そんなときのために、あらかじめ用意しておくのが一般的です。
用意するべき金額はハッキリ決まっていませんが、生活費の6か月分が目安です。
もちろん多めに用意できると、生活の不安が和らぎます。
開業に合わせて転居する人はその引っ越し代も考えておきましょう。
引っ越しシーズンだったり移動距離が長かったりすると、10万円以上かかる場合もあります。
忘れがちな費用なので、あらかじめ見積もりを取っておきたいですね。
必要な額は1000万!?開業資金はどうやってあつめればいい?
開業資金の主な内訳を説明しました。
「それで、必要な金額はいくらなの?」という疑問もあると思いますが、ハッキリとはいえません。
起業する人の状況やタイミング、業種や業態など、条件次第で変わってしまうからです。
ご紹介した内訳を自分の場合で当てはめて、計算してくださいね。
日本政策金融公庫が調査したところによると、開業資金の平均額は941万円だそうです。
「1000万円程あると安心して開業できる」といわれているので、参考にしてください。
ここでは主な調達先をご紹介します。
たくさんありますが、「自己資金」と「借入金(融資)」の2つに分類できます。
開業資金はまず自己資金で集め、足りない分を借入金で補うようにしましょう。
実際は自己資金が約3割、残りを融資で用意する人がほとんどみたいです。
自己資金で用意する
自己資金についてざっくり説明すると、出所が確かな自分のお金です。自分が働いて貯めたお金や、資産を売却して手に入ったお金が挙げられます。
融資の際には、この自己資金がいくらあるかがポイントになってきます。
日本政策金融公庫の新創業融資制度では、開業資金の10分の1を自己資金で用意することが求められます。
開業資金が1000万円なら、最低でも100万円は必要になるんですね。
実際は開業資金の3分の1程度用意しておかないと、審査には通らないといわれています。
さらに自己資金は融資してもらえる金額にも関わってきます。
融資額は「自己資金の2倍」が目安です。例えば自己資金が300万円ある場合、600万円の融資が期待できます。
交渉次第では融資額を上げられますが、審査に通りにくくなります。
「コツコツお金を貯めた」という事実は審査官に好印象を与えるメリットがあるほか、自分自身にとってもあればあるだけ返済の負担が減ります。
自己資金はできるだけ用意しておきましょう。
家族・友人からお金を贈与してもらう
親族や友人から、開業資金を調達する方法もあります。
そのひとつが「贈与してもらう」方法です。
贈与されたお金は、自己資金として認められやすいメリットがあります。
金融機関によって判断が分かれますが、「援助してもらえるような人柄である」とアピールできる可能性もありますよ。
デメリットは、贈与税が発生することです。
1月1日~12月31日の間に110万円以上のお金をもらうと、贈与税が発生します。全額に発生するわけではなく、110万円をオーバーした分に対して発生する仕組みです。
例えば300万円もらった場合、
300万-110万=190万円
190万円に対して贈与税が発生します。
「なら、大金を分割して援助すれば…」と考える人もいると思いますが、やり方次第では贈与税の対象になりますので注意してください。
お金を贈与してもらう場合は、その都度贈与契約書を作成して、口座振り込みで援助してもらいましょう。
担当者への説明がスムーズにできます。
家族・友人からお金を借りる
個人からお金をもらうと、贈与税が発生します。
贈与税を避けるために、借金という形で援助をしてもらうケースも多いみたいです。
メリットは、金額を気にせず援助できること。
もちろん返済義務があるので無駄な借金はできません。ですが金利や返済期間を、無理のない範囲に設定できます。
デメリットは、自己資金として認められないこと。
金融機関からの融資も検討している場合は、注意してくださいね。
家族からお金を借りるときは、必ず「借用書」などを用意してください。
きちんと返済しているのに、税務署から贈与を疑われてしまうケースがあるからです。きちんと証明できない場合、贈与として扱われてしまいます。
さらに、借金の条件によっては贈与税が発生する場合があります。
よくあるのが「無利子・無期限の借金」。親しい間柄ならではの条件ですが、税務署から見るとアウトです。
無利子の借金は、利子分を贈与していると判断されます。無期限の借金は、その金額分を贈与しているとみなされます。
お金の貸し借りはトラブルの元になりがちです。
親しい仲だからといってなぁなぁにするのではなく、しっかりと形通りに進めましょう!
融資を受ける
開業資金を自力で用意できるのが一番安全ですが、実際はかなり難しいもの。
お店を開く際には、金融機関の融資制度を利用する人がほとんどです。
でも初めての起業なら、圧倒的に日本政策金融公庫がおすすめ。
国が出資している機関で、国民が経済活動を活発に行ってもらうために、様々な活動をしています。
「新規開業資金」は、元々低金利なのに、条件次第ではさらに安くなります。返済期間も20年以内と長いので、月々の経費負担も軽いです。
他にも「女性、若者/シニア起業化支援資金」や「再挑戦支援資金(再チャレンジ支援融資)」など、創業の条件によって色んな制度を利用できます。
クラウドファンディング
インターネットで自分のビジネスをアピールして、資金調達する方法もあります。
知名度に関係なく、不特定多数の人から資金を集められるのが魅力です。
クラウドファンディングには「寄付型」「融資型」「投資型」「購入型」の4つのパターンがあります。
「寄付型」は文字通り、寄付を募るタイプのクラウドファンディングです。金額によっては贈与税の対象になるので注意してください。「融資型」は、インターネット上で融資をしてもらいます。相手に公開される情報が規制されているのが、一般的な融資との大きな違いです。
「投資型」は金銭や株式などで出資者にリターンを行います。他にも商品やサービスなどの特典を付けることもできます。一般的な投資とほとんど一緒です。
場合によっては金融商品取引法などの法規制を受けるので、気を付けて利用してくださいね。
「購入型」では支援してくれた人に、開発した商品やサービスを返します。「クラウドファンディング」と聞いて多くの人がイメージするのが、この購入型クラウドファンディングではないでしょうか。
どのタイプでも共通して、自分のビジネスを上手にアピールすることが求められます。
お店を開くなら、相手に「こんなお店、あったら行きたい!」と思わせることで、より多くの支援が受けられます。
SNSを活用してPRしたり、YouTubeチャンネルを開設して売り込んだり…と積極的に情報を発信していきましょう。
まとめ
開業資金は、オープン後も見据えた金額を用意しないといけません。
自己資金だけでまかなうことは難しく、融資制度を利用する人がほとんどです。だからといって融資だけを当てにせず、まずは自力でお金を用意しましょう。
融資を受ける際にも有利に働きます。
必要な経費を抑えることで、負担を減らす方法もあります。設備品は中古品やリースを使い、国や自治体の支援制度を頼ることで負担は軽くなります。
使えるものは何でも使って、ローリスクでオープンを目指しましょう!