開業のために、クリアすべきことはいくつもあります。
中でも「開業資金の調達」は外せません。
ですが働きながら資金を貯めるのには限界はあるし、銀行から融資を受ける手続きも大変です。
ご家族、特に親からお金を借りることを考えている人も多いのではないでしょうか。
審査がない分、気軽に準備できる方法ですが、注意しないと損をしてしまうかもしれません。
ここではそんな注意点を詳しくご紹介。
「親から開業資金を借りる(もらう)予定だけど、何に気を付けたらいい?」
こんな人にオススメです!
親から資金援助してもらうときに気を付けること3つ
開業資金を用意するときに、ご両親や祖父母の方から援助を受けることも多いと思います。
そのとき、特に注意したいのが「贈与税」。
うっかり贈与税の存在を忘れていて、数十万円の税金を請求された…なんてことも。
開業したばかりの不安定な時期に、あまり大金を払いたくないですよね。
他にも注意すべきことがありますので、詳しくご説明します。
親から開業資金をもらう場合は贈与税に注意!
贈与税とは、個人からある程度の財産をもらったときに支払う税金です。
その基準は年間で110万円。
「年間」なので、合計金額が110万を超えても発生してしまいます。
月10万円の資金援助を1年間受ければ120万円になるので、贈与税の対象になるんですね。
贈与税の計算方法は以下の通り。
- 贈与額-110万(基礎控除額)=基礎控除後の課税価格
- 基礎控除後の課税価格×税率-控除額=贈与税
ここに当てはめる「税率」と「控除額」は、「基礎控除後の課税価格」によって変わります。
さらに「誰からもらったのか」でも変わりますが、親からの贈与だと以下の通り。
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
200万円以下 | 10% | - |
300万円以下 | 15% | 10万円 |
400万円以下 | 20% | 25万円 |
600万円以下 | 30% | 65万円 |
1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
1,500万円以下 | 45% | 175万円 |
3,000万円以下 | 50% | 250万円 |
3,000万円超え | 55% | 400万円 |
参考サイト:No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)|相続税 |国税庁
例えば、親から600万円の資金援助を受けた場合、贈与税は…
- 600万-110万=490万
- 490万×20%-30万=68万
68万円を納めないといけません。
贈与税を支払わずにお金をもらう方法はいくつかあります。
ひとつは、年間で受けとる金額を110万円以下にすること。
援助の上限が決まってしまいますが、この方法が一番簡単です。
ただ、これが毎年繰り返されると「大きな財産を、分割で贈与しているのでは?」という疑いを持たれます。
なので、お金を受け取る度に贈与契約書を作成しておきましょう。
「条件を気にせず援助してほしい…」という人は、借入(借金)として援助してもらってください。
借入金でも贈与税の対象になる可能性が
借り入れ(借金)なら、基本的に贈与税は発生しません。
贈与税は、あくまで「もらったお金」に対する税金なので、返さなければいけない借入金は対象外です。
それでも贈与税を納めないといけないケースがあります。
よくある例が「親子だから利息(利子)はいらないよ」という場合。
このとき、法的には利息分は親からもらっているとみなされ、贈与税が発生します。
ただ、年間の利息が110万円を超えるような借金はないと思うので、気にしなくても大丈夫そうです。
ですが「お金がたまったらまとめて返す予定」という人は注意しないといけません。
定期的に返済しない借金は、本来の貸し借りとは認められず、借りた金額がそのまま贈与とみなされます。
そうならないために、借用書を作成して、その通りに返済するようにしてください。
「お金をもらったのではなく、借りているんだ」という証拠を残すことで、贈与税の支払いを回避できます。
余談ですが、対価を支払わずに借金の免除をしてもらった場合にも贈与税は発生します。
事前に借用書を書いて、あとで免除するという方法は使えないので、きちんと返済していきましょう。
金融機関から融資を受けるときは注意が必要
融資の審査を受けるときに、「自己資金がいくらあるのか」は重要視される条件なんです!
借金まみれの人が「また返すから、お金貸して!」といっても、信用できませんよね?
融資をする側も「この人はきちんと返済してくれるだろうか?」という疑問を解消するために、審査を行います。
自己資金があるということは、創業の準備を計画的に行ってきた証拠にもなります。
それなら、家族から借りたお金を自己資金にすれば、評価も良くなるんじゃない?
そう思ったアナタ!
残念ながら、家族からの借入金は自己資金と見なされません。
自己資金は「出所の確かな、自分の資産」のこと。
退職金や銀行口座に預けた貯金、売却できる不動産などがあげられます。
一方で、借りたお金やタンス預金は対象外。
タンス預金が対象外なのには「えっ?」と感じるかもしれませんが、出所が不明確だからだそうです。
確かに、正確な記録があるわけではないですもんね…。
借りたお金も自分の資産ではないので、自己資金と見なされません。
もし親から受け取ったお金を自己資金にしたいのなら、返済義務のない「贈与」という形で受け取りましょう。
ただ、金額によっては贈与税が発生するので注意が必要です。
親から開業資金を借りるときにするべきことは?
親から開業資金を借りるときは、必ず「借用書」か「金銭消費貸借契約書」を書きましょう。
きちんと利息も含めて返済しているのに、税務署から贈与を疑われてしまうケースがあります。
そんなときに、第三者でも分かる形で記録を残しておくことが重要です。
2つの違いはそこまで大きくはありません。
強いていえば、借用書は借主(借りる側)がサインして貸主(貸す側)が保管するのに対し、金銭消費貸借契約書は貸主・借主の両方がサインして保管します。
金銭消費貸借契約書の方が信用度が高いのですが、家族間だったら借用書でも充分。
ここでは、借用書の書き方について触れていますので、良ければ見ていってくださいね。
そして「返済している」という証拠も残しておく必要があります。
借用書の書き方と注意点
借用書はお金の貸し借りをする際に、最も簡易的に用いられる証書です。
貸主が原本を1部作成して、借主が署名・押印します。
借用書は、基本的に貸主のみが保管します。
決まった型があるわけではありませんが、以下の項目は必ず書いてください。
- 「借用書」の文字
- 借用書の作成日
- 貸主の氏名
- 借入金額
壱、弐、参…といった漢数字(大字)で、間隔をつめて書きます。 - 「借主が金銭を受け取った」という内容の言葉
- お金を借りた日付
- 返済期日
ここを決めていないと、贈与を疑われる場合もあります。 - 返済方法
- 利息
1~5%程度が妥当といわれています。
ここを決めていないと、贈与とみなされることもあります。 - 返済が遅れたときの取り決め
遅延損害金など - 借主の住所・氏名・押印
名前は、必ず手書きで書いてください。改ざんを疑われないようにするためです。
また、貸し借りの金額が1万円以上なら収入印紙を貼ってください。
開業資金ですから、必要ですよね…。
公正証書にしておく
作った借用書は、公証役場と呼ばれる場所で「公正証書」にしておくと安心です。
公証役場にいる公証人と呼ばれる人が、借用書を法的効力のあるものにしてくれます。
もしも税務署に贈与を疑われても、法的効力のある契約書があれば一目瞭然ですよね。
また、原本は20年間保管されるので、万が一紛失しても安心です。
ここまでやらなくても…という人は公証役場で「確定日付」をもらっておきましょう。
確定日付は「この書類は、この日付に確かに存在していました」という証拠になります。
「贈与税を逃れるために、後付けで作ったんじゃないか?」という疑いを晴らすことができます。
どちらも公証役場に出向いたり、手数料や印紙代がかかります。
少し痛い出費になるかもしれませんが、トラブル回避のためにも、どちらかはやっておくことをオススメします。
口座振り込みで返済する
返済は、必ず銀行の口座振り込みなどを利用してください。
特に親と同居していると、直接手渡しで返した方が楽ですが、これだと「お金を返した」という記録が残りません。
口座振り込みなら「いつ」「誰が」「いくら支払ったか」が通帳に記録されるので、借入の証拠になります。
まとめ
両親からお金を借りただけなのに、さらに税金を払うだなんてウンザリしちゃいますよね。
なんだか理不尽にすら思えるような…。
とはいえ、ビジネスである以上「親しき仲にも礼儀あり」です。
お金のやりとりは、一歩間違えると信用問題に関わります。
不備のないように準備をして、スムーズに資金を調達しましょう!
