日本政策金融公庫には、創業(起業)前後の融資支援が豊富。
創業する人の年齢や業種などの条件によって、異なる融資や特例が適用されます。
今回は、その中でも最もポピュラーな「新規開業資金」について説明します。
日本政策金融公庫からの融資を検討している人は必見ですよ!
新規開業資金って何?
新規開業資金とは、日本政策金融金庫が実施している融資制度のひとつ。
日本政策金融公庫は、起業支援のため財務省所管の特殊法人として2008年に設立されました。
国が100%出資して、中小企業や新規起業家向けの融資制度や、開業支援を行っています。
そのため、民間の金融機関よりも融資を受けやすく、金利や返済期限についても融通か利きやすいメリットがあります。
新規開業資金は日本政策金融金庫の中でもメジャーな融資制度。
融資してもらえる金額は7200万円が上限で、その内運転資金として使えるのは4800万円までです。
これにあわせて「新創業融資制度」を利用すると、担保・保証人ナシで融資を受けられるようになるんです!
しかし審査のハードルが上がる・融資限度額が3000万円(その内、運転資金1500万円)に下がってしまうなどのデメリットがあります。
新規開業資金でも、相談次第では無担保・無保証人でも融資してもらえるようです。
金利や返済期間は?
令和3年1月4日現在の金利は1.26~2.80%が基準で、ここから融資を受ける人によって変動します。
資金の使い道や返済期間、担保の有無などの条件に合わせて決まります。
例えば担保を提供すると、しない場合に比べて0.35~0.95%安くなります。
また一定の要件を満たすと特別利率が適用され、金利を安く抑えることができます。
例えばUターンして起業する場合、金利は0.4%ほど下がります。
返済期間は、運転資金として借りた分は5年以内、設備資金として借りた分は15年以内です。
据置期間がそれぞれ2年まであります。実際は半年~1年の据え置きになる場合が多いようです。
利用できる条件は10種類!一方で審査通過率は約半分なのはなぜ?
新規開業資金を利用できる人の条件は10種類あって、そのどれかに該当すれば審査を受けられます。
その条件を見ると、「逆に対象外の例をあげた方がいいんじゃ…?」って感じるほど幅が広いんです。
余談ですが、パチンコホールや競馬、競輪などの競技場や競技団といった、一部の業種では日本政策金融公庫の融資を受けられないんだとか。
しかし、実際に審査を通過できるのは50%~60%といわれています。
つまり約半分の人が審査に落ちてしまっているんです。
再度申し込みはできますが、審査に落ちた原因が解決しない限り、受けつけてはもらえないでしょう。
そのために半年~1年の時間がかかることも少なくありません。
一発で審査を通過できるように、準備をする必要があります。
新規開業資金を利用できる条件は多い
新規開業資金を利用するには、日本政策金融公庫が決めた条件をどれかひとつ満たしている必要があります。
その数は10種類。
難しく書いてありますが、要約すると
- 創業する業界の経験・スキルがある人
- 事業が客観的に見て新しいこと
- 就労の機会を生み出すこと
- 指定された公的支援を受けて開業すること
- 民間の金融機関(銀行・信用金庫・信用組合)と同時に利用すること
- 上記に該当しない事業で、「適正な事業計画を立てていて、それを遂行する能力があること」が認められ、1000万円以下の利用額であること
- 7年以内に、上記のいずれかの条件を満たして事業を始めた人
このどれかに当てはまればOK。
これから創業する人のほとんどが対象になるので、積極的にチャレンジしてみてください。
なぜ、審査に落ちてしまうのか
申し込んだすべての人が、新規開業資金制度を利用できるわけではありません。
国が出資しているということは、私たちの税金が使われているということ。なので無責任にお金を貸すことはできないんです。
そのため、担当者が「本当に返済できるのか」を判断して、問題がないと認めてもらう必要があります。
特に以下のポイントで落とされてしまう人が多いようです。
自己資金が少ない・「見せ金」の疑いがある
自己資金とは、自分で用意した資金のこと。
サラリーマン時代に貯金したお給料や退職金、売却できる不動産などが含まれます。
日本政策金融公庫では、「借りたい金額の10分の1」の自己資金を用意することを求められます。
ですが実際は「借りたい金額の3分の1」を用意しておかないと審査に通りにくいんです。
一番理想的なのは、「自分でコツコツと貯めてきたお金」。
自分で計画的に貯金できている人は、返済計画もきちんと遂行してもらえるだろうと、担当者の安心感につながります。
「そんなことしなくても、借金で一気に集めればいいじゃん」と思った方は、要注意。
審査のために一時的な借金をして、自己資金に見せかける行為は「見せ金」と呼ばれ、これだけで審査に落ちてしまうんです。
隠そうとしても、審査のときに直近半年分の通帳を担当者に見せるため、そこでバレます。
逆に、親などからの資金援助が、見せ金ではないかと疑われてしまうケースも。
誰かから資金援助を受けた場合は、その人の名前や関係を説明できる書類を用意しておきましょう。

税金などの支払いに未納や滞納がある
「お金返してないけど、返すからまた貸して!」なんていわれても、気持ちよく貸せませんよね。
昔よく聞いた「ツケでお願い」も、その人が払ってくれると信頼できるからこそ実現するわけで…
税金や公共料金、カードローンなどの支払いに遅れたことがある人は、審査を通過することが難しくなります。
ですがきちんと理由を説明して、状況が改善していることをアピールできれば問題ありません。
未納がある場合は、まず通過できないと思ってください。もし心当たりがあるのでしたら、すぐに支払いを済ませてくださいね。
こちらも源泉徴収票か確定申告書、半年分の貯金通帳で支払状況を確認しています。
ごまかすことはできませんし、嘘をついていたと分かってしまうと、担当者の心証は最悪になってしまいますよ!
開業への見通しが甘い·人間性に問題があるとみなされる
創業計画が隙だらけだったり、面談の時の態度が悪かったりすると、「開業してもすぐ廃業してしまうんじゃないか」と思われてしまいます。
続きそうもない事業に気軽にお金を貸せるほど、日本政策金融公庫も甘くはありません。
「とりあえず借りられるだけ貸して」といわれるより、「これを買う必要があるから、その分だけ貸して」といわれた方が、貸す側も納得できますよね。
新規開業資金では、創業計画書などがこの説明を担っています。
創業計画書は日本政策金融公庫のテンプレートが使えますが、足りない部分を自分で作った資料でアピールすることで、担当者に熱意が伝わります。
また、面談の際には担当者から厳しい質問を投げられることもあります。
このとき逆ギレしたり、ふてくされた態度をとってしまうと、「嫌なことがあったらすぐ辞めちゃいそうだ」と判断されかねません。
逆に真摯な態度で答えたり熱意をアピールすることで、審査に通る確率を上げることができます。
まとめ
日本政策金融公庫の中でも最もメジャーな新規開業資金。
起業家支援を目的とした融資制度で、民間金融機関の融資よりも審査に通りやすく、金利も安いというメリットがあります。
しかしお金を借りる以上、無責任なことはできません。
経営でもそれは同じこと。
審査を受けるときには、きちんと対応できるように、準備をしっかり整えておきたいですね。
