仕組み・ビジネス

日本のフランチャイズはどうなる?気になるポイントを解説!

「フランチャイズ」といえば、加盟店と本部の契約をめぐる法的問題が記憶に新しい人も多いのではないでしょうか。
未経験でも成功しやすいといわれる一方、法的トラブルに発展するケースが後を絶ちません。
フランチャイズビジネスに関する問題の増加を受けて、政府は施行規則の改定やガイドラインの改正に乗り出しました。特に施行規則の改定では、加盟前に必ず説明される事項に追加内容があります。

そこで今回、日本のフランチャイズビジネスの歴史や現状についてまとめました。
「フランチャイズって今、どうなってるの?」
「日本のフランチャイズにはどんな背景があるの?」
そんな疑問に、答えていきます!

何に注意すればいい?フランチャイズの歴史と今

年表を見上げる男性のフィギア
すでに経営をしている企業のノウハウやサポートを提供してもらい、ロイヤリティを支払うフランチャイズビジネス。
経営のスキルが低くても成功しやすいメリットがある一方、営業や仕入れなどで自由度が低いデメリットがあります。

フランチャイズが初めて登場したのは1850年代のアメリカでした。日本に上陸したのは1960年代です。
始まったばかりの頃は、私たちがイメージする仕組みとはちょっと違っていたみたいです。気になったので、フランチャイズが誕生した背景について調査してみました。
日本のフランチャイズビジネスの今後についても、まとめています。

フランチャイズが誕生したキッカケは何?

フランチャイズが誕生したのは、1850年代のアメリカといわれています。

当時のフランチャイズでは経営ノウハウの提供はなく、加盟店が本部の商品を売るだけでした。
なんだか代理販売店みたいな感じですね。

本部が経営ノウハウを提供してくれるフランチャイズが登場したのは、そこから100年後の1950年代
第二次世界大戦が終わったあたりで、退役軍人が就職難に悩んでいたり、チェーン店の需要の増加に供給(展開)が追い付かなかったり…といった問題が発生していました。
そのため「成功した経営ノウハウを買って、自分で店を開く」というフランチャイズシステムは、当時のアメリカですぐに受け入れられ、広がったそうです。
代表例は、ケンタッキーフライドチキンマクドナルドです。

日本での初めてのフランチャイズチェーン店は、1963年のダスキンといわれています。
その後1969年に第2次資本の自由化が行われると、さまざまなフランチャイズチェーンが登場しました。
ケンタッキーフライドチキンは1970年に日本に進出しています。

開業できる業種はたくさんある!

フランチャイズを導入している業種はたくさんあります。
主な例を挙げると、以下の通り。

■小売業

  • コンビニ
  • パン屋
  • 買取業、リサイクルショップ

■サービス業

  • 美容サロン
  • 学習塾
  • ペット向けサービス

■飲食業

  • キッチンカー
  • ゴーストキッチン(バーチャルレストラン)
  • ハンバーガーショップ

他にも不動産業界でもフランチャイズ契約を結ぶケースがあるそうです。
ただし、同じ業界の企業限定であることがほとんど。
不動産業に限らず、本部によっては「個人事業主とは契約しない」と決まっているところもあります。

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フランチャイズは今、転換の時期にきている

フランチャイズの問題点は、「どうしても本部が有利になってしまう」こと。
本部は自社のブランドイメージを守るため、加盟店にさまざまな制限を設けます。ブランドイメージは他の加盟店にとっても重要なことなのですが、これが時に問題化してしまいます。
相談をしても加盟店のせいにして、対応してくれない……
解約しようとすると、高額な違約金を請求される……

特にコンビニ業界では経営時間やテリトリー権の有無など、さまざまなトラブルが発生しました。
本部と加盟店の在り方について見直しを求める声が大きくなり、公正取引委員会が調査に乗り出したのです。その調査結果をもとに、ガイドラインに改正が加えられました。
さらに中小小売商業振興法施行規則の一部を改正する省令も出され、2022年4月より施行されます。

これについては次の項目で詳しくまとめているので、参考にしてください。

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日本のフランチャイズはどう変わる? ガイドライン編

RULEと書かれたカラフルな木材加盟希望者は経営スキルが未熟な人が多く、契約前にメリット・デメリット含めて把握しきれない場合があります。
もちろん本部も承知の上で説明してくれますが、中にはその未熟さに付け込んでくる業者も存在します。
間違って契約してしまっても、法的に「独立した事業主同士の契約」として扱われるため、何事もなく解約するのは至難の業。最悪の場合、法的トラブルにまで発展してしまうケースも多いです。

公正取引委員会は「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方について」と呼ばれるガイドラインを出しています。どのような行為が問題になるのかまとめられているので、本部の対応に疑問を抱いたときなどに確認することをおすすめします。

このガイドラインが、2021年4月に改正されました。あいまいな部分をはっきりさせたり、細かい条件が追加されたりしています。
ここでは、特に「加盟前の説明」についてを中心に解説します。

ガイドラインに法的拘束力はありませんが、知っておけば問題のある本部を避けるのに役立ちます。

売上予測の誤認を防止する文言を添える

「厳密な意味での予想売上げ等ではないものは、そうと分かるように説明をするのが望ましい」といった内容が追加されました。

売上予測(予想収益)とは、本部が「うちと契約すれば、これくらい儲かるよ」と公開するデータです。フランチャイズに加盟するなら、重要な判断ポイントですよね。ガイドラインでは、このデータの根拠から算出方法までを加盟希望者に説明するよう注記されています。

それとは別に、参考として収益モデル(実際の売上データ)や平均値から出したデータを公開することもあります。
例えば本部が出店したことがないエリアに、加盟希望者が出店したいと考えている場合。本部にはデータがないので正確な予測を提供できません。ですから、似た条件を持つエリアのデータや、全体的な平均値を提示します。
あくまで参考としてのデータでしかありませんが、それでも「これくらいは儲かるんだ!」と思い込んでしまうケースが後を絶たなかったんだそう。

追記された背景には、中小小売商業振興法施行規則の改定もあります。
特定の業種を営む本部は、法定開示事項を加盟希望者に説明する義務があります。そこに新しく、収支に関する項目が追加されました。
加盟希望者が混同しないように説明しなさい……と、ガイドラインで注意喚起しているんですね。

経営に悪影響を与える問題点があれば開示すること

ガイドラインの改正内容のひとつに、以下の注記が加えられました。

加盟者募集に際して,本部が営業時間や臨時休業に関する説明をするに当たり,募集する事業において特定の時間帯の人手不足,人件費高騰等が生じているような場合等その時点で明らかになっている経営に悪影響を与える情報については,加盟希望者に当該情報を提示することが望ましく,例えば,人手不足に関する情報を提示する場合には,類似した環境にある既存店舗における求人状況や加盟者オーナーの勤務状況を示すなど,実態に即した根拠ある事実を示す必要がある。

近年、コンビニや飲食業での人手不足が深刻化しています。
人手不足で運営が厳しい時間だけでも閉店したくても、契約違反になるため運営するしかない。そのせいでオーナーは常に過労状態…なんて、よく聞く話ですよね。他にも、人件費の高騰で経営が厳しくなっているお店もあります。安定した店舗運営のためには、十分な人材を確保することが必須条件です。
フランチャイズでも、求人を出せばすぐに応募が来るとは限りません。加盟する前に問題が分かっていれば、対策を立てることもできます。何より加盟後トラブルになる確率はグンと下がりますよね(個人的に、こういった情報をひた隠しにする本部とは契約したくないです……)。

法律で定められたものではないため、強制力はありません。
でも「ガイドラインに明記されているから」と言えるのは、心強いものです。

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中途解約の条件を明確にすること

フランチャイズ契約には契約期間が定められていて、期間中の解約は、基本的に違約金が発生します。
金額は契約書に記載されているのが一般的ですが、明記していない本部もあります。よくあるのが、加盟店の状況によって決めているケース。加盟店が解約を申し出たときに、そのときの状態に合わせて条件をすり合わせます。ケースバイケースになるので、具体的な条件を明記していないんですね。

交渉次第では少額で解約ができるかもしれませんし、相場以上の違約金を請求される可能性もあります。
何より「違約金や中途解約の条件が分からない」というのは、かなり不安を覚えるものです。

そこで今回の改定では、以下の注記が加えられました。

フランチャイズ契約において,中途解約の条件が不明確である場合,加盟に当たって加盟希望者の適正な判断が妨げられるだけでなく,加盟後においても,加盟者はどの程度違約金を負担すれば中途解約できるのか不明であるために解約が事実上困難となることから,本部は中途解約の条件をフランチャイズ契約上明確化するとともに,加盟者募集時に十分説明することが望ましい。

中途解約の条件が分かれば、万が一の心構えもできるので安心できますよね。

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ドミナント戦略に関する取り決めを明確にすること

ドミナント戦略(ドミナント出店)とは、狭い商圏内に一気に出店することで、競合他社の進出を防ぐ戦略です。
メリットも大きいのですが、同じチェーン店同士でつぶし合いが起こる危険があります。リスクを避けるなら、ドミナント戦略の有無は必ず確かめましょう。

でも実際は「配慮する」と言っておいて、何の相談もなく追加出店されたケースが多かったそうです。本部への信用が疑わしくなってしまいますよね。
今回の改定では、本部が「配慮する」と説明する場合は、具体的にどのような配慮をするのか説明するように付け加えられました。
残念ながらこれを無視しても、法的拘束力はありません。ですが「ドミナント戦略をとらない」と説明したにも関わらず、本部が近くに出店して加盟店に不利益を与えた場合、「優越的地位の濫用」に該当する可能性があるとも書かれています。

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日本のフランチャイズはどう変わる? 法律編

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日本には、フランチャイズに特化した法律はありません。
だからといって野放しにされているわけではなく、例えば本部が加盟店に不利益を与える行為には独占禁止法に触れる可能性があります。
他にも「中小小売商業振興法」では、特定の業種のフランチャイズ本部は「法定開示書面」を作成し、加盟希望者に説明する義務があります。

2021年4月に、中小小売商業振興法の施行規則に一部改正が加えられました。これによって法定開示書面として公開するべき事項に追加事項が発生します。
改正された施行規則は、2022年4月に施行されます。
詳しく説明しますので、参考にしてください。

一部のフランチャイズは法定開示書面の説明義務がある!

法定開示書面とは、ざっくりいうと本部のプロフィール帳です。
条件を満たした事業本部は法定開示事項をまとめた書類を加盟希望者に交付し、説明することを義務付けられています。
小売業や飲食店はまずこの条件に当てはまるので、契約前に確認してください。
法定開示事項には、過去の訴訟件数加盟店の推移など、契約するかどうかを判断する情報が詰まっています。

「サインだけしておいて」「形式的なものだから」なんていわれても、しっかり読み込むようにしてくださいね。

一般的にサービス業は法定開示書面を作成する義務はありませんが、自主的に開示している本部もあります。

具体的に何が変わるの?

今回の改定では、法定開示書面として説明するべき項目に、「加盟者の店舗のうち、周辺の地域の人口、交通量その他の立地条件が類似するものの直近の三事業年度の収支に関する事項」が新たに加わりました。
店舗の収益に関する項目が追加されることになります。
具体的には以下の通り。

(1)売上高
(2)売上原価
(3)商号使用料、経営指導料その他の特定連鎖化事業を行う者が加盟者から定期的に徴収する金銭
(4)人件費
(5)販売費及び一般管理費((3)及び(4)に掲げるものを除く)
(6)(1)から(5)までに掲げるもののほか、収益又は費用の算定の根拠となる事項

引用元:経済産業省令第三十八号

また、本部が「立地条件が類似する」と判断した根拠もあわせて開示するように義務付けられています。

売上予測や収益に関するデータは、実際にオープンしてみないとわからない要素も多いため、本部も進んで公開はしたがりません。ですが加盟店側の「売上予測に関する、ギャップが大きい」という意見を取り入れ、改定されました。
義務化されたことで、売上のシミュレーションをするために必要な情報が、集めやすくなります。

特定連鎖化事業じゃなくても、対応する可能性アリ

法定開示書面は、法律では「特定連鎖化事業」に指定された業種に対して、義務が発生しています。
明文化されているわけではありませんが、基本的に小売業と飲食業が対象です。

買取業やコインランドリー業など、対象外のビジネスは公開する義務はありませんが、該当する情報を公開しているところは多いです。今回の改正に対応して、追加された項目を新たに公開する可能性は十分にあります。
対応しないから問題がある……と決めつけるわけにはいきませんが、今回の改正に対する本部の動きは、本部選びの判断材料になるかもしれません。

まとめ

フランチャイズは、日本に登場してから世紀以上続くビジネスモデルです。
今回の改正が終わってもまだ課題は多く、「法整備が追い付いていない」という指摘もあります。

未経験でも始めやすいからこそ、事前の情報収集や準備が重要になってきます。
SNSやインターネット、専門家など上手に使って、自分に合った本部を見つけてくださいね。

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