フランチャイズ契約は、期間が決まっています。その長さは本部によってさまざま。
そして、短ければ良い…というわけでもないようです。契約期間が短すぎるとデメリットがあるんです。
契約期間の長さだけでなく、途中解約や契約更新についても気になりますよね。
今回は、フランチャイズの契約期間についての基本的な情報と、見落としやすいポイントについて解説していきます。
本部選びの参考にしてください。
フランチャイズの契約期間はどうなっているの?
フランチャイズとは、企業のチェーン店に加盟して、経営ノウハウ・商標の使用権などを利用して経営するビジネスの仕組みのこと。
ここでは経営ノウハウなどを提供する側を「本部」、加盟する側を「加盟店」と呼びます。
すでに起業して知名度のある本部のブランド力を使えるため、経営の経験がない人でも安心して起業できます。
その代わり、加盟店は本部に「ロイヤリティ」という名目で毎月お金を支払わないといけません。
さらにブランドイメージを守るため、経営に制限が設けられています。そのため法的トラブルに発展することも多いんです。コンビニの深夜営業を巡って裁判になったニュースを覚えている方も多いのではないでしょうか。
フランチャイズビジネスは、あくまでも起業手段のひとつ。
メリット・デメリット含めてしっかり調査して、納得して選ぶことが大切です。
契約期間の基準は「初期投資の回収期間」
フランチャイズ契約は、永遠ではありません。
無制限に制約をかけることは、職業選択の自由、営業の自由を不当に制限することにつながるという理由からです。そのためフランチャイズビジネスには期限があります。
業種によって変わりますが、平均的に3~5年といわれています。
フランチャイズの契約期間には、基準となる考え方があります。
それは投資を回収できる期間。
開業のために使った金額まで稼げる期間ということですね。
公正取引委員会では、「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方について」というものをだしています。
これはフランチャイズ・システムで起こる、独占禁止法の問題についてまとめたもの。
この中に、以下のような文章が載っています。
(1) 優越的地位の濫用について
加盟者に対して取引上優越した地位(注3)にある本部が、加盟者に対して、フランチャイズ・システムによる営業を的確に実施する限度を超えて、正常な商慣習に照らして不当に加盟者に不利益となるように取引の条件を設定し、若しくは変更し、又は取引を実施する場合には、フランチャイズ契約又は本部の行為が独占禁止法第二条第九項第五号(優越的地位の濫用)に該当する。
ここから、フランチャイズの契約期間は投資を回収できる期間が基準になっているんですね。
契約期間は、本部の事業規模を知る手がかりにもなります。
もし投資を回収できる期間に対して、あまりにも契約期間がずれている場合、その理由を尋ねた方がいいかもしれませんね。
契約更新した場合、短くなるケースも
契約更新をする場合、次の契約期間が短くなる場合があります。
初期投資には、物件取得や内装工事などの費用が含まれています。更新して再スタートを切る場合はそういった費用がかからないので、契約期間を短くする本部もあるようです。
契約期間を短くすると、契約内容の変更があったとき短期間で済むメリットがあります。
契約更新のタイミングが増えるため、新しくなった契約に変更するタイミングに合いやすくなるからです。
ただし契約期間が短いと、更新手続きが面倒になったり、更新手数料がかさんだりする場合もあります。
契約期間が短いことがデメリットだと感じる人は、更新した場合の契約期間もあわせて確認しておきましょう。
更新の種類について
契約を更新する方法は、大きく分けて2つあります。
日本では自動更新が主流ですが、契約する本部によって変わります。
どちらの方法を取っているのか、更新手数料は発生するのかも含めて、加盟前に確認しておきましょう。
自動更新
本部・加盟店のどちらかが「更新しない」といわない限り、自動で契約更新されるシステムです。
更新したくない場合は、満了前の期間内に意思表示をします。口頭で良いのか、書類が必要なのかについても、基本的に契約書で定められています。
合意更新
本部と加盟店の両方が合意した場合に、契約が更新されるシステム。
契約が満了を迎える前か、迎えたときに協議を行います。
その協議をいつから始めるかについては、契約するときに決めているのが一般的です。
実は本部から更新拒絶することはあまりない
契約を更新しようと思ったら、本部に拒絶されてしまった…
売れ行きが良い店は、オーナーを追い出して本部が独占する…
ネットの口コミを調べてみると、このような体験談を見かけます。闇が深くて怖くなってしまいますよね。
実は、本部が加盟店の「更新したい」という意思を拒絶することは、基本的にありません。
そもそも「正当な理由がない限り本部は契約更新を拒絶できない」と判決が出されています。正当な理由とは、加盟店が契約違反を犯したり、信頼を損なう行為をとったりした場合などです。
これには、加盟店の「投資回収への期待」を保護するという考え方が背景にあるようです。
「更新手数料をめちゃくちゃ高くしてやる!」
「不利な契約内容にして、更新させません!」
こんなことをいう本部もあるそうですが、独占禁止法に触れる可能性があります。フランチャイズ契約の更新を一方的に拒否されるのは、あまり現実的ではありません。
それでも一方的に拒否された場合は、専門家に相談してみることをおすすめします。
契約期間の長さで何が変わる?それぞれのメリット・デメリット
成功できるか分からない状況だと、契約期間が短い方が安心できますよね。
ですが契約期間が短くても、デメリットがあるんです。契約期間が長いからといって、成功しないとは限りませんよね。
オーナー自身のスキルや状況に合わせて、総合的に判断する必要があります。
契約期間が長い場合・短い場合で、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか?
どういった業種に多いのかも、ご紹介しています。
契約期間が長い場合
契約期間が長いフランチャイズには、広い敷地や多くの設備投資が必要なビジネスに多いです。
初期投資を回収できる期間が長くなるので、契約期間も長く設定されています。
メリット
本部のノウハウやサポートの提供が手厚いのが、長期契約のメリットです。長期的にノウハウの提供やサポートを受けられるので、経験量も自然と増えます。
投資が多い分、高い利益が期待できるのも魅力的です。
デメリット
途中解約ができず赤字経営を続けるリスクが大きくなる点には注意が必要です。それなりに事業も大きいので、違約金も高くなりがち。
よくよく考えてから契約しましょう。
実例
コンビニや飲食店などに多いです。
コンビニだと10年以上の契約期間が設定されているパッケージもあります。
契約期間が短い場合
契約期間が短いパッケージは、ひとりでも運営できる小規模なビジネスに多いです。
開業にあたって必要なものが少ないので、初期投資がかかりません。短期間でも十分に回収できるので、短く設定されているんですね。
メリット
契約内容の見直しがやりやすいです。こまめに更新するため、契約内容を見直す機会が多いからです。
契約期間が短ければ終了日まで続けやすいので、途中解約の違約金が発生するリスクも避けやすくなります。
比較的気軽に始められる点も強みですね。
デメリット
デメリットは、更新の頻度が多く手間がかかること。意思表示をしないと更新されないシステムだった場合は、特に面倒です。
更新手数料が発生するシステムだと、更新のたびに出費が発生してしまいます。
実例
ネットショップ運営やハウスクリーニング、買取業などがあります。
期間も、1~3年のパッケージが中心です。
フランチャイズの契約期間はココをチェック!
フランチャイズの契約期間は、本部の公開資料や説明会などで調べることができます。契約書にも盛り込まれていて、サインする前に必ずチェックするはずです。
ロイヤリティの算出方法みたいに難しくない部分なので、「期間の長さ」以外に注目していない方も多いのではないでしょうか。
実は、契約期間に関してつまずきやすいポイントがあるんです。そんな注意点をご紹介します。
トラブルに発展しないためにも、契約前にチェックしておきましょう!
契約期間の起点は、どのタイミング?
どのタイミングから「契約期間」が始まるのでしょうか。
なんだか重箱の隅をつつくようなことですが、見落とすと思わぬ痛手を負うかもしれません。
契約書にサインした瞬間からスタートだった場合、開業準備中も契約期間に入ります。実際に営業できる期間は短くなってしまうので、初期投資を回収しにくくなるかもしれません。例えば物件探しが上手く進まなかったりすると、開業準備に1年以上かかってしまうケースもあります。
オープン日から契約期間がスタートするなら、開業準備も余裕をもって行えます。
更新方法はどうなっている?
契約更新の方法は「自動更新」と「合意更新」が主流です。
自動更新は、どちらかが更新を拒否しなければ自動的に更新されます。合意更新は、合意があった場合に更新されます。
本部がどの方法で更新しているのかは、必ず確認しておきましょう。業種によっては開示書面として説明する義務があるので、簡単に確かめられます。
また、更新には更新料が発生する本部もあります。事業計画に組み込んでおくためにも、更新料の有無もチェックした方が安心です。
途中解約について
途中解約に関する条件は、特に念入りなチェックが必要です。
例えば、誰もが気になる違約金。その金額はいくらまでというルールがないので、本部によって差があります。とはいえ、あまりにも高額な違約金は、裁判で取り消される場合もあります。金額の算出方法はおかしくないかも含めて、チェックしておきましょう。
また、いつまでに通知を出さなければいけないのかも把握しておかなければいけません。
本部によっては、契約書に途中解約について記載されていないケースもあります。
加盟店の状況に合わせて条件を決めているため、わざとそうしているところが多いようです。その場合、違約金ナシで解約できる可能性もあります。
保証金などの清算方法は?
保証金とは、フランチャイズ加盟時に預けるお金です。
ロイヤリティが支払えなかったり、債務不履行があったりすると、ここから差し引かれます。
解約時に返還されるのですが、いつ、どのように返還されるのかは本部によって違います。
また、保証金が担保する範囲も違うので、合わせて確認しておきましょう。
「契約が終わるときでも間に合うでしょ?」と思う方も多いですよね。
フランチャイズは契約書にサインをすると、「その内容すべてに納得した=文句をいえない」ことになってしまします。
実際に保証金の返還について、弁護士に相談している方も多いです。
最後の最後にトラブルにならないためにも、サインする前にチェックすることをおすすめします。
契約終了後の義務についても要チェック!
フランチャイズの契約期間が満了を迎えても、加盟店にはいくつか守るべき義務があります。
その中で最もトラブルになるのが、「競売避止義務(きょうぎょうひしぎむ)」です。
ちょっと難しい言い方ですが「契約していた事業と同じか、似た事業をしてはならない義務」のことです。会社員の方でも、競業避止義務を負う場合があるようです。
フランチャイズでは、事業内容や看板などの他に、道具や立地場所も対象に含まれる可能性があります。
法的問題になるかはケースバイケースですが、本部に賠償金を支払う結果になった方もいます。
一般的に契約書には競業避止義務についての項目があって、「どの期間禁止するのか」「どこまでが似た事業なのか」などについて触れています。
独立を視野に入れてフランチャイズビジネスを選ぶなら、契約前に確認をしておきましょう!
まとめ
フランチャイズの契約期間をみれば、投資回収が完了するおおよその目安がつきます。
売上予測や収益モデルなども含めれば、どのくらい稼げるのかを知る手がかりにもなりそうですね。
説明会やフランチャイズの契約書には、本部の加盟店に対する考え方が現れています。
できれば複数の本部の契約書を確かめて、自分のビジネスプランに合った契約を選ぶようにしましょう。