フランチャイズ契約を結ぶと、加盟店オーナーとして経営していきます。オーナーは多忙なため、店長を雇って負担を減らしている方も多いです。
これからフランチャイズで開業する方の中にも、店長を雇うことを検討する方もいるのではないでしょうか?また、オーナーになる前に、店長として経営ノウハウを身につけたいと考えている方もいるかもしれません。
どちらにしても、メリットや注意点を把握していないと、思わぬトラブルに巻き込まれる可能性があります。
今回は、オーナーが店長を兼任するケース・店長として雇われるケースそれぞれの特長を詳しく解説します。
オーナー店長と雇われ店長の違いは何?
店長は、店舗経営に欠かせない役職です。店舗の責任者として、シフト管理や仕入れ業務、経営方針の決定など多くの業務を担います。
フランチャイズの場合、店長は「オーナー店長」と「雇われ店長」の二種類に分けられます。
二つの違いは、オーナーが店長を兼任しているかどうかです。
オーナー店長は、オーナー自身が店長の役割を兼任しています。ここでいうオーナーは、フランチャイズ本部と契約を結んでいる、店舗経営の責任者のことです。会社に例えるなら、社長にあたります。小規模なビジネスでは、オーナーが店長を兼任しているケースが多いです。
雇われ店長は、文字通りオーナーに雇われた店長のことです。この場合、店長の立ち位置は、会社でいう「管理職」にあたります。店長として雇われた場合、売上や経費、シフト、在庫の管理、従業員の指導などを担当します。
オーナー店長の仕事内容
オーナーが店長を兼任する場合、オーナーとしての仕事と、店長としての仕事をこなします。
主な業務内容をあげると、以下の通りです。
- 売上や経費の管理
- 仕入れ業務や在庫管理
- 従業員のシフト管理、指導
- 従業員の雇用の決定
- 経営戦略の管理、見直し
- 資金準備
フランチャイズの場合、経営戦略は本部の方針に合わせて決定するため、ゼロから考える必要はありません。大きな仕事は、資金準備や人材教育、仕入れ管理が中心となります。
仕入れ先も、本部が用意しているルートを使用するので、新規開拓の苦労がありません。もちろん、本部が許可すれば自分で開拓することも可能です。
フランチャイズに加盟すると仕事の負担は減りますが、本部とのやり取りが発生します。
さらに、フランチャイズ契約に関する責任も発生します。そのため、責任の重さは、自力で開業する場合より重くなることがあります。
雇われ店長の仕事内容
店長として雇われた場合は事業の経営にはタッチせず、店舗運営に関してのみ責任を負います。
店長は以下の業務を、オーナーから任されます。
- 売上や経費の管理
- 仕入れ業務や在庫管理
- 従業員のシフト管理、指導
オーナーとの契約によっては、店長の仕事内容が変わることもあります。また、上記の業務をオーナーと一緒に行う場合もあります。
雇われ店長は、管理職として、休日出勤や残業などの過重労働を迫られる可能性が高いです。「名ばかり店長」という言葉がニュースに出てきたのを覚えている方も多いのではないでしょうか。
店長の目的は、オーナーの指示に従って売上を伸ばすことです。オーナーの方針が難題でも従わなければならないため、オーナーの要望と店舗内の状況との板挟みになることもあります。ただし、経営に関する責任を負わなくていい立場なので、気持ち的には負担が軽いです。
なるならどっち?それぞれのメリット・デメリット
オーナー店長と雇われ店長の違いは、オーナーが店長の役割を兼任しているかどうかです。そして、それぞれメリット、デメリットがあります。
注意して選ばないと、思わぬトラブルに発展したり、効率的な店舗運営ができなかったりするかもしれません。
オーナー店長と、雇われ店長のメリットや注意点をご紹介します。フランチャイズに加盟した場合についてもまとめたので、参考にしてください。
ご自身のビジネスプランに合ったスタイルを選択しましょう。
オーナー店長のメリット
オーナー店長のメリットはいくつかあります。主なものは以下の通りです。
経営の判断が柔軟にできる
事業に関する判断を、オーナー自身で決めるので、スムーズに経営方針が決まります。
店長を雇っていた場合は、今後の展開について意見が合わなかったとき、お店の雰囲気がギクシャクしてしまうかもしれません。
また、勤務時間や休日など、働き方を自由に決められるのも魅力的です。フランチャイズの場合は、契約で定められた範囲内になってしまいますが、それでもサラリーマン時代より自由に働くことができる可能性が高いです。
ニーズの変化に対応しやすい
実際に店舗を運営するため、お客様のニーズの変化に気付きやすいメリットがあります。
安定した利益を出すには、ニーズを敏感に察知するスキルが欠かせません。もちろん、情報誌やニュースからでも把握できますが、自分のお店に求められるモノというのは、直接、店頭で接客した方が把握しやすいです。
利益が増えれば収入も増える
オーナー店長は、経営者として事業を展開しています。そのため、利益が大きくなれば、収入も多くなります。
人件費が安い
店長を雇う必要が無いため、人件費が抑えられます。店長を雇う場合、平均的な月収は35万円といわれています。その分の出費を、効果的な集客対策や設備投資などに回して、利益アップを目指す…といった考え方もできます。
オーナー店長のデメリット
魅力的にも思えるオーナー店長ですが、デメリットもあります。
主なデメリットは以下の通りです。
持つべき責任が多い
経営方針は自分で決められますが、その責任はすべて自分が持つことになります。赤字になっても、誰かが売上を保証してくれるわけではありません。これはフランチャイズでも同じで、赤字が続いて倒産したとしても、本部に責任を追及することは難しいです。
また店長も兼任しているため、店舗運営に関する責任も負います。従業員のシフト管理や指導、売上金の管理など、責任をもって対応していかなければなりません。
業務量が多い
オーナー店長は店舗運営と経営の両方をこなす必要があります。お店を営業しながら、今後の経営戦略も考えなければなりません。そのため、なかなか休む時間が取れず、体調を崩してしまうオーナーも多いです。
多額の資金が必要
開業するためには、多額の資金が必要になります。開業資金や経営が安定するまでの運営費などで、数千万円という金額になる場合も多いです。そのため融資を受ける方も少なくありません。
他にも、開業準備そのものも負担になります。さまざまな場所へ足を運んだり、いろんな方とやり取りしなければならないときもあります。スムーズに進めるためにも、計画をしっかり立ててからの行動がおすすめです。
フランチャイズに加盟する場合
経営の経験がない状態で開業することに、不安を覚える方も多いのではないでしょうか。
フランチャイズに加盟すると、実績のある企業から経営をバックアップしてもらえます。実際に経営するのはオーナー自身なので、実務を通して経験を積むことができます。
ただし、軽い気持ちで加盟すると、後悔する結果になるかもしれません。
オーナー店長がフランチャイズに加盟するメリット
店長としての経験が少なくても、開業しやすいです。加盟者はまず、本部の研修会に参加します。そこで経営に必要な知識から、業界で生き残るためのスキルまで、一通り身につけます。開業後も、経営アドバイスをもらえるので、安心感があります。
経営サポートも充実していて、例えば買取業の場合、査定の代行やサポートをしてくれるのが一般的です。
また、本部が提供する商標などを使用するため、オープン直後でも知名度に期待が持てます。
オーナー店長がフランチャイズに加盟するデメリット
まず最も大きな注意点は、フランチャイズ契約は、簡単には解約できません。加盟後に不利な事実が分かっても、契約期間内の解約には違約金が発生します。本部に重大な落ち度があったり、納得できる事情があれば、違約金が免除される可能性があります。
また、毎月ロイヤリティを納めなければなりません。経営が苦しくても支払わなければならず、生活に影響する可能性があります。
雇われ店長のメリット
雇われ店長の場合、雇うオーナーと、雇われる店長それぞれにメリットがあります。
オーナーにとってのメリット
まず店長を兼任しないため、業務の負担が軽いことがあげられます。シフト管理や仕入れ業務といった運営業務は店長が担当するので、オーナーは毎日顔を出す必要がありません。店長を雇うことで、副業としてフランチャイズオーナーになることも可能です。
また、店長から自分にはないアイデアや改善点を提案される可能性もあります。自分以外からの意見がきっかけで、経営が向上するかもしれません。
店長にとってのメリット
雇われ店長のメリットは、何といってもローリスクで店舗運営に関われることです。給料として安定した収入もあります。一定期間勤務すれば、失業手当を受けとる権利も得られるので、万が一のことがあっても安心して再スタートを切れます。
店長としての経験だけでなく、現場で求められるスキルを身につけることも可能です。例えば、ネイルサロンの店長として経験を積んでから独立すれば、開業資金を貯めながら専門的なスキルも磨けます。
雇われ店長のデメリット
雇われ店長の場合、デメリットもあるため注意が必要です。オーナー、店長それぞれの立場でご紹介します。
オーナーにとってのデメリット
雇った店長に店舗運営を任せることで、思い通りの経営ができなくなるリスクがあります。オーナーが直接運営していないため、意見を反映させるのがどうしても遅れがちになってしまいます。
店長のスキルが不足していると、オーナーの意図したように動いてくれない可能性もあります。
店長と上手に連携をとらないと、経営方針が混乱してしまうこともあるため、情報交換は積極的に行いましょう。
雇われ店長にとってのデメリット
店長はお店のトップとしてさまざまな業務をこなすため、長時間労働や過重労働におちいりやすいリスクがあります。シフトに穴が開けば、代わりに出勤しなければなりません。しかも時間外労働手当が発生しないため、頑張りが給料に反映されにくいです。
基本的にオーナーの指示に従って動くため、自分の思い通りに働けない場面も多々あります。仮に優れた意見を提案しても、オーナーに拒否されたら実現できません。「自分の思い通りに運営したい!」という方は、オーナーとして自分のお店を持った方が、ストレスなく働けるでしょう。
フランチャイズに加盟する場合
フランチャイズ加盟店の場合は、オーナーと雇われ店長で、どのような違いがあるのでしょうか。
オーナーの立場は、フランチャイズ契約による責任が発生します。契約違反があった場合、本部に支払う違約金はオーナーが出します。そのため、契約違反しないような経営に務め、常に気を配る必要があります。
本部との連絡も、基本的にはオーナーが対応します。提出書類の用意やロイヤリティの支払いも、オーナーの業務です。
フランチャイズに加盟することで、オーナーの責任や仕事量は多くなります。
雇われ店長の立場で見ると、フランチャイズ加盟の有無はさほど関係ありません。
フランチャイズ契約を結んでいるのはオーナーであり、契約に関する責任は店長にはありません。
しかし、店長には本部のブランドイメージを傷つけないような運営をする責任があります。例えば、バイトテロの防止やクレーム処理などがあげられます。配慮するべき相手が多い分、対応スキルがより求められる…といえます。
まとめ
オーナー店長と雇われ店長の違いや、メリット、デメリットをご紹介しました。
オーナー店長は、経営に自分の意思を反映できるメリットがあります。お客様の要望にスムーズに応えられるため、利益を上げやすくなります。
一方で持つべき責任が多く、廃業時の影響が大きいなどのデメリットがあります。
雇われ店長を採用した場合、オーナーは業務の負担が軽くなるため、自分の時間を取りやすくなります。雇われた側の店長にとっても、ローリスクで経験を積めるメリットがあります。ただし、お互いが上手くコミュニケーションを取れないと、経営が混乱してしまう可能性があります。
ご自身の経営方針に合わせて選択してくださいね。