リサイクルショップや買取業など、中古品を取り扱うビジネスには「古物商許可証」が必要です。
警察署に申請して、審査に通れば取得できます。
申請には2万円弱の手数料がかかりますし、必要書類を取り寄せるための費用も発生します。
なにより、申請は警察署に足を運ばなければならないので面倒です。
できれば一発で取得したいですよね。
そこで今回、古物商の許可申請が不許可になってしまう原因をまとめました。
よく聞く「欠格事由(欠格要件)」についても詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください!
古物商の審査に落ちた…。なぜ?
古物商不許可の原因は人それぞれですが、以下の3つに当てはまってしまう人が多いようです。
- 古物商を営むのに必要なスキルがないとみなされた
- 申請者、管理者(法人の場合、役員も含む)が欠格事由に該当した
- 営業所が古物商を営むのにふさわしくなかった
審査の際、「欠格事由」と「営業所」はかなり厳しく調べられます。
古物のビジネスが許可制なのは、防犯と被害の迅速な回復のためです。一般的に窃盗犯は、盗んだ物をお金に変えようとします。買取業者と警察が連携することで、盗まれた物が市場に出るのを防いだり、犯人の検挙に役立てたりしています。
また、犯罪に協力的な人を関わらせない目的もあります。思い出の品を、信用できない人に売りたくはないですもんね…。
不安がある場合、担当者に問い合わせてみるのもおすすめです。レスポンスが遅い可能性もありますが、確実なアドバイスがもらえますよ。
今回は「欠格事由に該当した」と「営業所がふさわしくなかった」の2点に絞って解説します。
欠格事由に該当していると不許可の原因に。自分でできる対策は?
欠格事由とは、古物商営業法によって決められた、「許可証を与えられない条件」です。
古物営業法の四条には、定められた条件に該当する者に許可を与えてはならないとする条文があります。これが欠格事由と呼ばれるもので、該当している人は誰であっても不許可になります。
審査でも「申請者が欠格事由に該当するか」を徹底的に調べられるので、無理に隠そうとするのはおすすめしません。
欠格事由は全部で11あります。ひとつでも当てはまっていると、古物商の許可がおりません。
完璧な営業所や申請書類を用意していても、不許可になってしまいます。
ですが欠格事由には、例外や解決策があります。
それぞれ詳しく解説していきますので、ぜひご覧ください。
破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
ざっくりいうと、「破産した人」ですが、例外があって、それが「復権を得た者」です。では、「復権」とはどういうことでしょう?
自己破産が認められると、色々な制限がかかる…という話は有名ですよね。ローンが組めなくなる他に、住居や郵便物も制限されます。
さらに一部の資格は、取得することができません。その中に古物商も入っているんです。
しかし自己破産が認められると、一般的に「免責許可の申し立て」も始まります。
借金や債務などの、返済義務の免除を求める申し立てです。これが認められると、返済義務はなくなり復権を得ます。復権を得た人は、古物商許可証の申請もできるようになります。
ギャンブルのやりすぎで破産したり、名義貸ししたカードを使わせるなど、よっぽどのことをしていない限り復権できます。
免責許可は、申し立てから3~6か月後に認められます。破産手続き中の方は免責許可が認められてから、行動を開始しましょう。ただ、復権を得ても連絡は来ないらしく、自分で確認する必要があります。復権したかどうかは、本籍地のある市町村役場からもらう身分証明書で確認できます。
禁固刑以上を受けて出所5年が経過しない者
どの犯罪・違反であっても、禁固以上の刑を受けると欠格事由にあたります。
ちなみに禁固以上の刑は「懲役刑」と「禁固刑」、「死刑」の3つです。なので喧嘩をして罰金刑になった場合は、欠格事由に当てはまりません。
ですが、特定の犯罪については、罰金刑でも欠格事由になってしまいます!
- 窃盗罪
- 遺失物・占有離脱物横領罪
遺失物、漂流物そのほか占有を離れた他人の物を横領すること - 盗品等有償譲り受け等罪
盗品と知りながら、有償(無償)でそれを取得すること - 背任罪
任務に背く行為をして相手に財産上の存在を与えること
盗難に関係する犯罪が多いですね。
また、古物営業法に定める以下の罪を犯した場合でも、欠格事由に該当します。
- 無許可営業
- 許可の不正取得
- 名義貸し
- 営業停止命令違反
いずれにしても、刑を終えてから5年が経過していれば申請ができます。
ちなみに、執行猶予が付いた場合は、執行猶予が明ければすぐに申請ができますよ。
暴力団員、元暴力団員、暴力的不法行為をする恐れがある者
暴力団員は、暴力団員である限り申請ができません。元暴力団員は、暴力団員でなくなってから5年が経過していれば申請可能です。
暴力団ではない犯罪組織の構成員でも、「暴力団のような犯罪を行う可能性がある」と判断されれば該当者になります。
また、過去10年の間に暴力的不法行為をした人も、欠格事由に該当する可能性があります。
ここでいう「暴力的不法行為」とは、古物営業法施行規則に定められた違法行為のことで、再犯の可能性が認められると不許可になってしまいます。
再犯の可能性の有無は、犯罪行為の動機や背景、日頃の素行を見て総合的に判断されているそうです。
「暴力団員による不当な行為の防止などに関する法律」により、公安委員会から命令・指示を受けて3年経っていない人も欠格事由に該当します。
これらの欠格事由に該当した場合は、行動を改めてから時間が経てば申請可能になります。
住居の定まらない者
申請者自身の住所が確認できない場合、不許可になってしまいます。
具体的には住民登録がない方や、住民票に登録された場所に住んでいない方が該当します。
事情があって住民票に書かれた住所に住んでいない場合、理由を説明すれば申請できる可能性があります。
古物商に詳しい専門家に相談することをおすすめします。
ちなみに2018年の法改正によって、許可証を取得した後でも「所在不定」とみなされると取り消しになります。
引っ越しをして、警察署に変更手続きをしなかった場合になるそうです。忘れずにしっかり手続きしましょう!
古物商の許可を取り消された日から5年経過していない者
古物営業法に違反するなどして古物商許可を取り消された場合、取り消された日から5年以内は審査に通りません。
法人として許可証を取得していた場合は、以下の条件に該当した方が欠格事由に当てはまります。
- 聴聞の期日や場所の公示日前60日以内に、その法人の役員だった
- 取り消された日から5年経っていない
自主返納した場合はこの限りではありませんので、安心してくださいね。
取り消されてから処分が確定する前に自主返納した者
古物商許可証を自主返納しても、欠格事由に該当しません。ですが、古物商許可取り消しから逃れるための自主返納は別です。
例えば法人の場合、行政から調査のために意見を聞かれる時間があります。これを「聴聞」というのですが、そこから正式に取り消されるまでの間に返納する人がいます。
この場合の返納は「自主返納」にならず、欠格事由になってしまいます。
古物商の許可が取り消されると5年間は再申請できないので、自主返納で取り消しを逃れようとする人が出るんですね。この条件は逃げ道をふさぐために、定められているんですね。
この場合は返納してから5年が経てば申請ができます。
心身の故障により古物商または古物市場主の業務を適正に実施することができない者
かつては成年被後見人と被保佐人が対象でした。「精神的・身体的な問題で判断能力が低下している」と家庭裁判所に判断された人は、古物商の許可を得ることができませんでした。
2019年12月に施行された「成年被後見人等法(成年被後見人等の権利の制限に係る措置の適正化等を図るための関係法律の整備に関する法律)」によって上記のようになりました。
しかし一方で、上記の制度を利用していない人がこの条件に当てはまってしまう可能性もあります。
この事由に当てはまった場合、解決するのは難しいでしょう。自己申告しなければ該当しないといわれているので、いわない方が無難です。
ですが医者に診断されている・何からの問題を抱えている場合は、素直に相談した方がトラブルは避けられます。
未成年者
文字通りです。ですが例外があって、以下のどれかに当てはまれば、古物商を始めることができます。
- 古物商の相続人から営業を引き継ぐ
- 法定代理人から営業を許されている
2022年までは、一度結婚をすれば未成年でも申請ができました。民法改正によって成人年齢が18歳に引き下げられたこと、女性の婚姻開始年齢が18歳になったことから、この制度が消滅しました。
成人年齢と結婚できる年齢が一緒なら「結婚=未成年でも大人扱い」は成り立ちませんもんね…。
未成年者が古物商になる場合、法定代理人に関する書類が必要です。
また、営業所の設置に必要な管理者になることはできません。成人している他の人にお願いしましょう。
管理者にふさわしくない者を選任した者
営業所には、最低でも1名の管理者が必要です。
管理者が「ふさわしくない」と判断されると、その営業所の管理者がいなくなってしまいます。なので不許可になってしまうんですね。申請者が管理者を兼任する場合は、そのまま申請者が古物商にふさわしくないと判断される結果につながります。
管理者は慎重に決めた方が、通過率は上がります。
判断基準は担当者によって変わりますが、以下の条件は必ず求められます。
- 欠格事由に該当していない
- 営業所に毎日通える(片道2時間以内の場所に住んでいる)
- 他の営業所の管理者ではない
近隣の営業所なら、兼任できる可能性があります。
管理者としての知識やスキルは、必須条件ではないものの「努力義務」です。就任後に身につけていく努力ができる方なら、問題ありません。
【法人のみ】役員に欠格事由の該当者がいないこと(例外あり)
法人で許可証を申請する場合は、監査役を含む役員全員が欠格事由に該当しないことを求められます。誰か一人でも欠格事由に当てはまれば、古物商を始めることはできません。
しかし、2つだけ該当していても不許可にならない条件があります。
- 未成年者
- 管理者にふさわしくない者を選出した者
役員の中に未成年の方がいたり、未成年の方が引き継いだ法人で申請したりしても問題ありません。
ただし、未成年者が管理者になることはできませんので、別の役員に任せる・新たに管理者を探すなどの対策が必要になります。
営業所にふさわしい場所ってどんな場所?
古物商の許可を申請する際、営業所の住所も届け出ます。
担当者は、営業所が古物商を営むのにふさわしい場所か確認します。現地調査に来るケースもあるみたいです。そこで問題が見つかると、最悪の場合不許可になってしまいます。
営業所は古物商で開業する方は必ず必要です。インターネットのみで営業する方でも、自宅を営業所にするなどして申請します。
古物商許可証が必要な方は、古物商を営むのにふさわしい営業所を探さなければいけません。必須な条件は3つあります。
実体のある場所
営業所には、事業を営むことができる場所であることが求められます。「書かれている住所に行けばお店があること」が大切です。
住所や電話番号を借りるスタイルのバーチャルオフィスは、営業所として利用できません。
盗難事件が発生したとき、買い取った在庫に盗品が紛れ込んでいないか、警察官が調べに来ることもあります。そのとき、申請書に書かれた住所に在庫がなかったら、捜査が遅れてしまいます。
古物商は、完全な無店舗経営が難しい資格営業なんですね。
申請者が使用する権限を持つ物件である
賃貸物件やレンタルオフィスで申請する場合、営業許可が出ているかが重要です。
アパートやマンションなどでは、住居専用になっていてビジネス用に使用できない可能性があります。無視して開業してしまうと、大屋さんや管理会社とのトラブルに発展するリスクがあります。
また、契約期間にも注意が必要です。契約期間が短いと「古物商許可証の取得だけが目的か?」と受け取られてしまい、審査が厳しくなります。
短い期間で更新する場合は、更新がされることを証明する書類(契約更新に関する合意書のコピーなど)を求められる場合もあります。
古物商の許可証を取得した後に営業所を移転した場合は、警察に行って手続きをふまないといけません。仮に申請が通っても手間が増えてしまうので、契約満了間近の状態で申請はおすすめできません…。
独立性がある
ざっくり説明すると、他のスペースとしっかり区切られていることです。お客様が自分の営業所のスペースを把握できる状態だと、審査に通りやすいようです。
営業所には、買い取った在庫や取引の記録(古物台帳)が保管されています。これらが適切に管理できない場所では、許可は下りません。関係者以外が簡単に入れるような場所は、営業所にふさわしくないとみなされます。
シェアオフィスやコワーキングスペースのように、壁やドアで区切られていない場所では不許可になってしまいます。
まとめ
「古物商許可の申請はめんどくさい」と感じる方もいます。
不許可になって何度も警察署に足を運ぶ…なんてことにならないよう、事前の準備は万全に整えておきましょう。
欠格事由(欠格要件)は種類が多いですが、犯罪を犯すなどよほどのことをしていない限りは当てはまることはありません。
もし当てはまってしまっても解決手段があるので、専門家に相談したりしましょう。
営業所についても、警察署の他にも不動産屋に問い合わせてみるのもおすすめです。