いわゆる中古品、新古品を取り扱うのに必要な「古物商許可証」。この許可証の審査は警察が行います。
許可証を取得するための申請は基本的に誰でも可能ですが、特定の条件に当てはまる方は取得できません。
他にも、申請者自身に問題はなくても不許可になってしまうケースもあります。
許可証の取得には時間や手間がかかります。できれば一発で審査に通りたいですよね。
そこで今回、よくある不許可の原因と対処法についてまとめました。
自分で申請を行いたい人、必見です!
古物商の許可申請が通らないのはなぜ?
古物商の許可申請が通らないのはなぜでしょうか?
古物商の審査中、警察署は主に以下の条件について調べています。
- 申請者は欠格事由に該当していないか
- 営業所は古物商を営むのにふさわしい場所か
上記のいずれかに該当する場合、許可が与えられないことがあります。
「収入の見通しが甘いと、許可が下りないのでは?」と心配する方もいるかもしれません。しかし実際は、収入の低さを理由に却下されることはほぼありません。
警察署に届け出を出す前に、必ず「欠格事由」と「営業所の適切さ」はチェックしておきましょう!
不許可になる原因①:欠格事由に該当した
古物商になるには、古物営業法によって定められたルールに従う必要があります。
古物営業法には、「特定の条件に当てはまる人には、古物商の許可を与えてはならない」と定められています。この条件を欠格事由(欠格要件)と呼びます。
欠格事由に該当していると、古物商の許可を取得できません。古物商になりたい方は、まず欠格事由に該当していないかを確認しておきましょう。ただし万が一、欠格事由に該当していても、対策することで取得できる可能性があります。
欠格事由は全部で11項目あります。今回は、はじめて申請する方が特に注意するべき条件をご紹介します。
すべての条件について詳細を知りたい方は、以下の記事がおすすめです。
破産手続き開始の決定を受けて復権を得ない者
自己破産を経験した場合、復権するまでの間、古物商の許可申請が通りません。
「破産するとできなくなる職業がある」といいますが、古物商もその職業に含まれます。許可を取得した後に破産した場合は、古物商の許可は取り消しになります。まさかいないとは思いますが、「先に許可証を手に入れてから、破産しよう」と思っている方は、考えを改めた方が賢明です。
基本的に、破産手続きと復権手続きは同時に進行します。復権が認められるのは、申し立てから3~6か月後が一般的です。ギャンブルによる過度な債務や虚偽申告など、よほどの理由がない限りは復権が認められます。
復権が認められない場合でも、破産してから年数が経過していたり、借金を完済していたりすれば、裁判で復権が認められるケースもあります。
自己破産している方は、復権が認められるのを待ってから、行動を開始しましょう。
特定の刑罰を終えてから5年経っていない者
特定の刑罰に処された方は、その刑の執行を終えてから5年間は古物商になることができません。
基本的には、禁固刑以上の刑罰を受けると該当します。禁固刑以上の刑とは、「禁固」「懲役」「死刑」の3つです。実際に注意するべきなのは、禁固と懲役の2つです。どちらも刑務所に収監される刑罰ですが、出所してから5年経つまで、古物商の許可申請は通りません。
執行猶予がついていた場合は、執行猶予の期間が終わるまでが対象です。
特定の犯罪を犯した場合は、罰金刑でも欠格事由に該当します。窃盗罪や背任罪など、盗難に関する犯罪が中心です。こちらも刑を終えてから5年が経過するまでは、欠格事由の対象となります。
暴力団員関係者(元関係者も含む)
反社会的行動を行う暴力団員は、欠格事由に該当します。暴力団に所属していた経歴がある場合でも、その組織から離脱して5年経過していない限り、不許可となってしまいます。
暴力団員でなくても、犯罪組織の構成員として「暴力的不法行為等を常習的に行う可能性がある」とみなされると、同様に欠格事由の該当者となります。
さらに「暴力団員による不当な行為の防止などに関する法律」に基づいて、公安委員会から命令・指示を受けてから3年経っていない人も欠格事由とされます。
住居が定まらない者
住所のない人のことですが、申請書類に書かれた住所に実際に住んでいない場合も該当します。許可申請の際に住民票を提出する必要があるため、審査中に発覚するケースはほとんどありません。
しかし、うっかりこの条件に当てはまってしまうことがあるかもしれません。というのも、開業するにあたって、営業所の近くに引っ越すことがあります。そのとき、住民票の移動を忘れてしまう…というパターンが考えられます。
開業準備の忙しさで住所変更手続きを忘れてしまわないよう、計画的な引っ越しをおすすめします。
ただし、単身赴任中や仮住まいに住んでいるなど、きちんとした理由がある場合は申請が通る可能性があります。
心身の故障により業務を適正に行えない者
「身体的・精神的な障害などがあって、古物商として営業できない」とみなされた方のことです。
基準がハッキリしているわけではないのですが、お金の計算ができない、店舗に立つことが難しい…という場合は該当する可能性があります。
もともとは成年被後見人と被保佐人が対象でした。しかし成年後見制度を利用している方の中には、古物商を営むのに十分な判断能力を持つ方もいます。「これは不公平ではないか?」という声から現在の条件に変わったそうです。
現在は、申請者ごと個別に審査がおこなわれます。精神障害があっても、担当者が問題なしと判断すれば、古物商許可証が発行されます。逆に、障害者手帳を持っていなくても、担当者が「適切な業務を行えない」と判断すれば、不許可になってしまう可能性があるので気を付けてください。
未成年者(例外あり)
成人していない方は、古物商許可証を取得できません。
ただし、以下の条件に該当する方は、この欠格事由から外れることがあります。
- 親族が営んでいた古物ビジネスを相続する
- 法定代理人から、営業を許されている
いずれにしても、法定代理人を立てて「未成年登記」を行わなければなりません。さらに、法定代理人にも欠格事由に該当しないことが求められています。
また、未成年の古物商は、営業所に必要な管理者になれません。
未成年の方が、自分だけの力で古物商許可証を取得するのは、難しいのが現状です。
管理者にふさわしくない者を選任した者
営業所には、最低でも一人の管理者が必要です。管理者は誰でもいいというわけではなく、ふさわしくない人間を選任すると、古物商の許可を受けられません。
管理者の役割は、営業所の適正な運営です。場合によっては、警察署とやりとりすることも考えられます。そのため、管理者は営業所に毎日通える範囲に住んでいる必要があります。他の営業所との兼任も、基本的にはできないようです。
さらに、欠格事由に該当していないことが求められます。
管理者としてのノウハウは、就任後に身につける努力をすれば問題ありません。また、管理者は申請者が兼任できます。どうするかは、慎重に判断しましょう。
欠格事由に該当してしまった…どうすればいい?
残念ながら、欠格事由に当てはまってしまうと古物商にはなれません。
だからといって経歴を偽造してしまうと、20万円以下の罰金が科せられる可能性があります。許可が取り消されると欠格事由に該当してしまい、5年間は取得できなくなります。
申請するときに誓約書も提出するので、「知らなかった」では済まされません。
虚偽申請をせずとも、いくつかの条件は自力で対策できます。
たとえば、古物商の欠格事由には「過去5年間」の期間が決まっているものが多いです。そのため、5年経つのを待てば問題なく申請できます。他にも、専門家の手を借りることで解決できるものもあります。
相談するなら、古物商に詳しい行政書士がおすすめです。
不許可になる原因②:古物商を営むのに不適切な営業所だった
古物商で開業するには、営業所と呼ばれる場所が必要です。
営業所では、ビジネスの拠点として買取りやレンタルなどを行います。お店を構える場合は、そのお店が営業所になります。インターネットビジネスとして開業する場合は、自宅を営業所として申請するのが一般的です。
営業所はどこでもいいわけではなく、いくつかの条件を満たさなければなりません。古物商の許可申請をする前に、営業所に問題はないか確認しておくことをおすすめします。
次に紹介する条件に当てはまってしまうと、「営業所としてふさわしくない」と見なされてしまいます。
他の事業者との区別がつかない
「営業所は独立性があること」が求められます。独立性、と聞くと分かりにくいのですが、簡単に言い換えると、他のスペースと区切られている必要があります。
壁やドアでしっかり区切られていて、部外者が簡単に入れないようになっていれば、まず問題ありません。
動かせるパーティションで区切られていたり、入り口が共有されていたりすると、独立性がないと判断される可能性があります。
レンタルオフィスやシェアオフィスなどは独立性がないとみなされやすく、不許可になりやすいです。
物件によっては個室タイプの部屋が借りられるところもあります。レンタルオフィスで許可申請を行いたい方は、独立性があるかどうか確認しましょう。
申請者に営業する権利がない
申請者に、営業所でビジネスを行う権利がない場合も、不許可となります。
自宅を営業所にする場合、賃貸と持ち家でそれぞれ注意点があります。
自宅が賃貸物件だった場合、賃貸契約が「住居専用」となっていると、営業活動ができません。営業できない物件は営業所として申請できず、古物商の許可が受けられません。
ただ、管理会社や大家から許可を得ていれば、審査に通る可能性があります。
所有物件でも、集合住宅だった場合は不許可になる可能性があります。
マンションやアパートなどの集合住宅には、管理規約というルールがあります。規約で営業活動を禁止されている場合は、営業所として申請できません。
こちらも管理者や住民から許可を得ていれば、申請できます。
テナント向けの物件を営業所にする場合、契約期間に注意が必要です。
契約期間が短いと、「古物商として営業する気がないのかも?」と疑われてしまい、申請が通らない可能性があります。
更新して利用し続けるなら、問題ありません。契約更新を証明する書類を求められる場合があるので、あらかじめ準備しておくと安心です。
営業の実体がない
営業所は、ビジネスの拠点です。「そこを訪ねればサービスを受けられる」状態でなければなりません。
古物商は盗難事件が発生したとき、警察と連携をとって被害の回復に務めます。営業所を訪ねても古物商に会えない…という状況は、避けなければなりません。
営業できないことが明らかな物件だと、営業所として認められず不許可となってしまいます。
また、古物商は営業所に古物台帳を備え付け、「古物商プレート」と呼ばれる標識を掲示しなければなりません。これらを無視すると、罰則を受ける可能性もあります。そのため、営業所は物理的に存在している必要があります。
バーチャルオフィスは文字通り仮想のオフィスなので、古物商の営業所として認められません。
書類の不備にも要注意!
不許可とは少し違うのですが、申請書類に不備が見つかると、申請を受理してもらえない可能性があります。その場で修正できれば良いのですが、その場で修正できないミスや書類の不足があった場合は、出直さなければなりません。
修正が終わらない限り申請を受け付けてもらえないので、古物商になる日が遠のきます。審査中に不備が発覚した場合は、そこで審査が止まってしまうため、審査期間が長引きます。
よくある失敗は、申請書類の日付の間違いです。
古物商の許可を申請する書類は、警察署に提出する日付で作成します。申請は提出したその日に受理されるとは限らないので、日付を書かずに持っていくことをおすすめします。
申請書類と一緒に提出する添付書類は、申請者ごとに変わります。提出書類が不足しているのに気づかず、申請してしまう方も多いようです。
提出する前に警察署や専門家に確認することで、スムーズに手続きを進められます。
まとめ
古物商許可の審査に落ちる原因をご紹介しました。
欠格事由に該当している方は、申請者に問題がなくても審査に通りません。また、営業所が古物商を営むのに適していない場合も、不許可になってしまいます。
古物商の許可申請は営業所や管理者などを用意したり、必要な書類をそろえたり、何かと苦労します。せっかくの努力が無駄にならないよう、準備は慎重に進めましょう。